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高齢者の定義「5歳引き上げ」?!

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◎5月23日、岸田総理大臣が議長を務める「経済財政諮問会議」で、高齢者の定義を現在の「65歳以上」から「70歳以上」に引き上げる提案が行なわれた。

◎6月13日、日本老年学会は、高齢者を「75歳以上」とし、準高齢者を「65~74歳」、超高齢者を「90歳以上」とする同学会検討ワーキンググループの報告書を公表した。日本老年学会理事長/国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典氏は「年金や定年に関する政府の議論とは無関係であり、今回の報告書ではあくまで医学的な立場から高齢者の定義を検証した」と説明

年齢、特に「高齢者」という定義について議論が活発化しそうです。

現在、わが国では65歳以上を高齢者、そのうち65~74歳を前期高齢者、75歳以上は後期高齢者と定義している。他国を見ても60歳以上を高齢者としている国もあるが、多くの国は65歳以上。

筆者は一概に年齢で事をかたずけるような議論について批判的な意見です。「〇〇歳だからできない」「〇〇歳だからしょうがない」など年齢を掲げて制限を語るようなことはしたくありません。

三大差別とは聞いたことあるでしょうか?社会的に重大かつ広範な影響を及ぼす3つの主要な差別のことを指します。①レイシズム(人種差別)②セクシズム(性差別)そして③エイジズム(年齢差別)でです。

エイジズム(年齢差別)とは。年齢に基づく差別です。特に高齢者や若年者が、それぞれの年齢を理由に不当な扱いを受けることがあります。例えば、労働市場での高齢者の排除や、若年層に対する未熟との偏見が挙げられます。

年金制度について考えてみても、20歳から加入義務、65歳から受給開始というように年齢で縛ることが、65歳からはもう働かなくてよい。働けない。働くべきではない。などの先入観のようなものを抱きかねないと考えています。高齢者の働ける範囲を狭くしている元凶のようにも考えられます。

介護の現場で働き始め、はや20年が経とうとしています。そろそろ筆者も高齢者の背中が見えてきたかな・・という年齢です。いろいろな高齢者を見てきました。具体的な例も挙げてみると。

A様:50歳代男性

40歳代でくも膜下出血の末、要介護状態となられました。左半身が麻痺という状態ながら、なるべく自分でできることはする!という気持ちの持ち主でした。彼は、もともとバリバリの銀行員で融資担当をされていたという頭脳の持ち主でした。子宝にも恵まれず障害を負ってから50代に離婚も経験されましたが、驚きなのはその先にまだ向上する意欲があるということでした。印象的な発言として「還暦までには結婚したい」「自分の子供が欲しい」「男はたちション(立位での排尿)」などがある。

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B様:70歳代男性

誤嚥性肺炎を患い、入院されてから廃用性症候群で寝たきり状態。食事も流動食を少量と胃婁による経管栄養で生命を保持しているような状態。作業現場で働かれていましたが、お酒と女性にお金を使い、家族も遠のいてしまった方でした。唯一、娘様が施設への面会やいろいろな手続きに動かれていました。印象的な発言は「なにもする気がせん」「めんどうな」「このままでいい」と言わば寝たきり希望でした。

簡単にA様は、やる人 B様は、しない人

もちろん年齢は20歳の違いはあります。障害的なレベルは同じぐらい

それ以上に気持ちに違いがありますよね。

C様:90歳代男性

表装師として講演をされ、弟子も何人もいらっしゃいます。地域の公民館で行われる講座にはお弟子さんが送り迎えをされるほどです。歩行器で歩けます。特に障害があるといえば、目と耳が不自由となってきているご様子がうかがえます。何度も聞き返したり、手探りで物を探される、歩行器が廊下で壁にぶつかる。など。眼科医からは「もう治せない」「もう片目は失明」「歩けているのが不思議」と言われても歩かれます。眼科に通っては「先生、もう少し見えるようにならんだろうか?」と繰り返し尋ねられていました。

このABC様3名を比べても20歳ごとの差があります。

筆者はC様の生き様に憧れの気持ちを抱いています。頑固というか、あきらめが悪いというか、と思う方もいらっしゃるでしょうが。なんとかして前に進もうとされていました。

年金制度が悪いとは言いません。元気な高齢者がいれば、理由があり能力を低下してしまっている方もいらっしゃいます。国として、国民に対して生活を保障する意味での制度としては特によく考えられた仕組みであります。

一般的な見方は、さまざまである。

賛成意見では、

〇健康寿命の延長:医療技術の進歩や健康意識の向上により、健康寿命が延びているため、65歳でも元気に活動できる人が増えている。定義を引き上げることが現実にあっている。

〇労働力の確保:少子高齢化が進む中で、労働力不足は深刻な問題。定義を引き上げることでシニア世代が長く働ける環境を整えることが労働力の確保である。

〇年金制度の持続可能性:定義を引き上げることで年金受給開始年齢も引き上げられ財政負担を軽減することが可能となる。

また反対意見としては、

〇個人差の無視:定義を一律に引き上げることで、元気な65歳がいる一方、健康に不安のある人々が不利な状況に置かれてしまう。

〇高齢者の雇用環境:高齢者の雇用環境がまだ十分に整備されていない地域や産業も多いので、定義を引き上げる前に、安心して働ける環境の整備を。

などが挙げられそうです。多角的な視点から慎重に議論する必要がありそうです。特に健康寿命の延長や労働市場の状況を考慮しながら、個人の多様な状況に対応できる柔軟な政策を検討いただけることを期待したい。

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